以下は、「点字毎日」2006年5月21日号(活字版5月25日号)に掲載された私のエッセーです。毎日新聞社点字毎日の許諾を得て転載致します。

なお、「三療」は「あんまマッサージ指圧・鍼・灸」の三つの治療のことを言います。

漢点字がもたらした世界

名古屋市・平瀬 徹(43歳・三療師)

点字の存在を知ったのは、17歳の春でした。点毎に地元の点訳サークルが、ポールモーリアのピアノ楽譜を点訳したという記事が掲載されていました。早速、問い合わせたところ、「点訳した本が摩滅してもいいように、転写して下さる方を探しています」というお便りが同封されていました。

これなら私にもできます。ボランティアの方々にお世話になって、ただありがたいと思うだけではなく、自分でさせていただけることがあるということに感激し、早速活動日に電話をしました。そうすると「名古屋に住んでいるのなら一緒に活動しませんか」と声を掛けていただいて、大樹会の活動に参加するようになりました。

大樹会では、楽譜や将棋の棋譜などとともに、漢点字訳にも取り組んでいました。活動に参加して漢点字を知り、「時を計る」と書いて「時計」、動物や小鳥が「鳴く」のと人が「泣く」のとでは字が違うことなど、それこそ感激の連続でした。  パソコンも点訳ボランティアの方々と一緒に勉強してきました。2000年8月にチェコで開かれた国際アビリンピック大会の国際会議に出席したのも、漢点字直接入力で文字を書けるようになっていたからこそ実現できたことでした。

「声の漢点字情報」というテープ雑誌がきっかけで、視覚障害者のパソコン教室やガイドヘルパー講座、エレクトーン演奏などで全国からお招きいただくと、現地では必ず漢点字ユーザーの方が待っていて下さいます。観光客目当てではなく、地元の人が普通に食事をされるお店で、方言を耳にしながら漢点字ユーザーの方たちと歓談できるのは何よりもの幸せです。

最近になって、統合教育を受けている中学生をサポートしている点訳サークルから「漢点字によるサポートが必要になったので教えに来てほしい」という依頼を受けました。これをきっかけに、かな点訳に習熟したボランティアに、漢点字の構成や点訳のポイントを理解していただくための「ボランティアのための漢点字入門」を周囲の方々の協力を得て作り始めました。漢点字が与えてくれたさまざまなプレゼントへのご恩返しと、漢点字の素晴らしさを、より多くの方々に知っていただけるようにという願いをこめて!


戻る