ガイドヘルプの基本形

ガイドヘルプは、一人では外出できない視覚障害者に付き添って歩行の介助や誘導をする活動です。

ガイドヘルプの基本姿勢

ガイドヘルプをして下さる方(ガイドヘルパー)は、通常は右腕のひじの上または肩を視覚障害者の左手で握ってもらい、視覚障害者の歩調に合わせながら半歩先を歩いて下さい。そうすれば、視覚障害者自身も右手に持った白杖で周囲の障害物を確かめながら歩くことができます。(白杖を左手で持っているときは、右ひじに導いてください。)

※肩を貸そうとして下さる方が多いのですが、手が離れやすいので、身長差が著しく違わない限りひじを貸していただいたほうが安全です。

動く車や自転車以上に、溝や電柱、飛び出している看板には恐怖を感じるものです。

ひじや肩の動きで、段差も判るので細かいことにお気遣いいただかなくても安心して歩くことができます。肩やひじに力が入っていると段差が判りにくいので、普段歩くときと同じように自然に力を抜いて歩いて下さい。あまり気を遣いすぎて歩みがゆっくりだと、近くに障害物があるのではと構えてしまい、恐怖感を抱かせることになります。

※半歩後ろを歩く視覚障害者が気になって、視覚障害者の方を向いて話しかけながら歩こうとなさる方がいらっしゃいますが、視覚障害者の方を向いてしまうと,ガイドヘルパーの肩が回転しますので、視覚障害者も方向を変えてしまい、危険です。


手引きを必要としない人のガイドヘルプ

盲導犬使用者は、従来は左手でハーネスを持って、盲導犬の右側を歩いていましたが、最近は建物側を盲導犬が歩くように訓練されるように変わってきているそうです。そのため、あなたは盲導犬がいない側でガイドするか、後ろから方向を教えて下さい。

少し視力がある人の場合は、皆さんの後ろについて歩くことができます。後ろから方向を指示していただくより、皆さんの足元を見ながら歩いたほうが水たまりを避けたりするのに安心なのです。

狭い場所を歩くときは

狭いところでの腕の形

二人並んで歩くことができない狭い場所では、あなたの右手を背中に回して下さい。私たちは、あなたの腕の動きを感じ取りながら、後ろをついて歩くことができます。

 

 

イスがたくさん並んでいる会場など、後ろについて歩けない場所では、手首を握って横歩きします。



登山やハイキングでは、あなたのリュックにロープを結びつけていただき、それにつかまらせていただければ、お互い負担が少なく、険しい坂でも後ろについて上ることができます。
 

もっと狭い所は横歩き


階段では

階段を下りる 階段のステップに斜めに近づくと足を踏み外 す危険性があるので、必ずまっすぐに近づきます

目で確認できない視覚障害者にとっては、階段があると言われただ けでは上りか下りかはわかりません。実際とは逆に思ってしまって、空振りしたり踏み外したりする場合もあるので、必ず上りか下りかを教えて下さい。そのとき、あまり手前で階段があることを告げられると、すぐ目の前にあると思って足が前に出なくなったり、階段の始まりを足で探し始めてしまいます。



階段で声をかけるタイミング!

視覚障害者が単独歩行するときは、階段の直前で立ち止まって白杖で段の高さを探らなければなりませんが、ガイドして下さる方がいらっしゃるときは、あなたが上り階段では一段上ってから、下り階段では一段下りたところで教えていただくと、ひじの上下で段差が判るので安心できます。

階段の終わりは、視覚障害者の片足が最後の段に着いたとき「終わりです」と声をかけて下さい。




階段上り始め

階段上り最終段

階段下り始め

階段下り最終段

このタイミングで
「上り階段です」
ここで、「終わりです」 ここで、「下り階段です」 「終わりです」

視覚障害者が手すりの利用を希望したときは、手すりに手を導いてあげれば自分で上り下りできます。もし両側に手すりがあるときは、左側を利用し、右手で持った白杖で段差を確認できるように導いて下さい。


螺旋らせん 階段は、左右の足を踏み出す間隔が近い位置に導いていただけると安心です。もし不安定なときは、あなたが手すりを持って介助して下さい。
螺旋階段を上る 螺旋階段を下る

 


エスカレーターでは

エスカレーターに乗る エスカレーターも階段と同じで、あなたが先に足を踏み出して乗ります。視覚障害者はそんなにエスカレーターを怖がってはいません。
エスカレーターに乗ってから 乗った後で足が二段にまたがっていたら、声をかけて位置を修正して下さい。 

 

一人乗り用エスカレーターに乗る 一人乗り用のエスカレーターの場合も狭い場所のガイドと同じようにあなたが先に乗り、続いて視覚障害者が一段下に乗ります。もし視覚障害者が手すりを持ちたければ、乗ってから左手を手すりに持ち替えます。あなたのひじの上下や手すりの傾斜で終わりが判るので、そんなに心配することはありません。

お年寄りの場合はエスカレーターを怖がることもありますが、バランスがとりにくいからで視覚には関係ないと思います。そんなときは、いざという時のために、後ろで支えることができる位置で見守ります。

駅など、名古屋では、エスカレーターはそのまま乗っている人は左に寄り、急ぐ人は右側を駆け上ります。しかし、関西では逆のようです。周囲の人に迷惑にならないよう、乗った後はどちらに寄ればいいか教えて下さい。私たちは、周囲との調和や流れを大切にしたいのです。
 

階段と段差は違います

階段と言われると、何段か続くことを想像し、段差と言われると「一段だけだな」と思います。

間隔が一定の階段は、皆さんのひじや肩の動きだけで判るのですが、神社のように不規則な階段が続くときは、一段ずつ説明が必要です。

歩道と車道の間の段差は、場所によって違います。「少し」とか「ちょっと」と言われても、人によって感じ方が違います。細かな段差の説明で、逆につまずいてしまうこと もありますので、どの程度なら説明が必要か、相手の意向を確かめておくとよいでしょう。
 

ドアを通過するときのガイド

ドアの通り抜け1 ドアの通り抜け2 戸口を通過するときは、まず開き戸か引き戸か、どちらに開くかを教えて下さい。

 ガイドヘルパーができるだけドアに寄って、押さえながら視覚障害者を回転させるようにすると、反対側の壁や植木などにぶつけることなくスムーズに通り抜けることができます。
ドアの通り抜け3 ドアの通り抜け4  

周囲の様子も教えてください

リンゴはこうなってるの?

街の様子や人の服装、咲いている花などを説明していただきながら歩くことができると、とても楽しいです。どんなに些細なことでも、見たままを説明していただけると、次に同じ場所を訪れたときの目印になり、信頼関係も深まります。 靴やバッグ屋さんの前なら皮のにおいがしますし、喫茶店の前なら香ばしいコーヒーのにおいが漂ってきます。同じ所を何度も通るうちに、階段や路地からの距離などから、今自分がどこにいるのか類推できるようになります。

会話の中で「見えない」と言うことにあまり気を遣わないで下さい。見えなくても景色や服装・色の話を聞くのは楽しいものです。「白は清潔、ピンクは可愛い」などというように、全盲でも色に対するイメージは持っています。


名古屋の待ち合わせスポットナナチャン人形は、身長が6メートルもあります

所用で視覚障害者の側を離れるときは

何もない広い空間よりも、柱や壁の側で待たせていただいたほうが安心できます。人にぶつかられたりして、方向が判らなくなることを避けるためです。


荷物を持っていただく必要はありませんせん

ガイドしていただくときに、よく「荷物をお持ちしましょうか?」と言われることがあります。しかし、ガイドして下さる方には、いざというときの危険回避のためにできれば手を空けておいていただきたいのです。


雨の日は

大きめの傘に二人で入るのがスムーズです。その際、視覚障害者・ガイドに関わらず、背が高い方が内側の手で傘を持つといいでしょう。

レインコートは耳が塞がって周囲の音が聞こえにくくなるので、傘のほうが安心です。


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